心電図を見る際には、下記の順序で見ていきます。
1)リズムは?(正常洞調律、洞頻脈、洞徐脈、洞不整脈?)
2)QRS軸は?(正常軸、右軸偏位、左軸偏位?)
3)各波の時間間隔を見ます。
4)各波の波形変化の有無を見ます(振幅を含めて)。
5)以上を総合して心電図診断を下します。
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第15例解説
1)リズムは?(正常洞調律、洞頻脈、洞徐脈、洞不整脈?)
RR間隔は0.84秒ですから、心拍数は71/分となり、正常洞調律と診断されます。
2)QRS軸は?(正常軸、右軸偏位、左軸偏位?)
QRS波の平均振幅は、第1誘導で陽性、第3誘導でも陽性ですから、正常QRS軸と診断されます。しかし、6個の肢誘導のQRS波を見ますと、第3誘導のQRS波の振幅が最も低く、移行帯波形を示していますから、本例のQRSベクトルは第3誘導軸と垂直な方向、すなわち+30度の右側、おおよそ+35度くらいの方向を向いていると考えられ、正常軸ではあるが左軸偏位傾向を示していると判定されます。
3)各波の時間間隔を見ます。
P波の幅、PR間隔、QRS間隔、QT間隔(通常はQT間隔は測定しません。一見して、延長しているように見えたり、U波が著明な際にのみ測定します。しかし、QT間隔は心拍数の関数ですから,下式を用いて心拍数による補正を行い、延長しているかどうかを判定します(Bazettの式)。
QTc(補正QT間隔, corrected QT
間隔)=QT(秒)/〔(RR間隔(秒)〕1/2
このようにして求めたQTcが450msec以上の場合にQT間隔延長と判定します。QT間隔短縮についての基準値はありません。
4)各波の波形変化の有無を見ます(振幅を含めて)。
QRS間隔が狭く、右側胸部誘導(V1, 2)でR波の振幅が高く(生理的右室優位)、右側胸部誘導(V1, 2)でT波が陰性(若年性T波、juvenile T
wave pattern) 等の所見があり、これらは正常小児心電図の特徴的所見です。
5)以上を総合して、この心電図は「正常小児心電図」と診断します。この心電図は正常な6歳、男児の心電図です。