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1.心室肥大心電図の基礎
心室肥大心電図は最も遭遇することが多い心電図所見です。心室肥大の際の一般的心電図所見としては以下の4つの基本的所見が上げられます。
1.肥大側誘導におけるQRS波の高電圧 (high voltage)、
2.QRS間隔の延長、肥大側誘導における心室興奮時間の遅延、
3.QRS波形の変化、
4.ST−T変化。
これらの所見の中では、偽陽性率が低く、陽性率が高い項目はQRS波の高電圧であるため、心室肥大の心電図診断基準としてはQRS波の電圧基準が広く用いられています。しかしながら、診断基準値の設定は、統計的に正常例における計測値の95%ないし98%上界値を用いているため、若干の偽陽性の混入は避けることが出来ない宿命があります。
心電図診断の際に最も注意するべき事は、心臓に異常がないのに誤って「異常あり」と診断し、一種の医原病(iatrogenic diseases)
である心電図性心臓病(heart diseases of electrocardiographic origin) を作ってはならないということです。
1.左室肥大心電図診断基準
1.Sokolow-Lyon診断基準
左室肥大の心電図診断基準の内、最も広く知られているのはSokolow-Lyonの診断基準(1949)です。本来、この基準はQRS波の高電圧、 ST-T変化、 R/S比などを含んだ総合的な基準でした。しかし、その後、時日の経過と共に淘汰されて、主としてQRS波の高電圧のみが用いられるようになりました。なかでもRV5+SV1とR1+S3の高電圧が主として用いられています。
Sokolow-Lyon基準(以下、Sokolow基準と略記)の本来の基準値は下記の値です。
1)RV5+SV1≧35mm,
2)R1+S3≧25mm
しかし、これらの本来のSokolow基準の値を用いると、日本人の若年者、殊に男性では著しく偽陽性率が高いことが判明しました。そのため、私たちは日本人正常例の心電図計そっくちに基づいて、下記のような診断基準値をSokolow基準補正値として、左室肥大の心電図診断に用いることを提案しています。若年者で偽陽性率が高い理由は、胸壁が薄いためであると考えられます。下記に私たちの左室肥大心電図診断のためのSokolow基準補正値を示します。下記の2所見の内、何れか1項目を満たせば左室肥大(left ventricular hypertrophy)と診断します。
1) RV5(6)+SV1≧40mm (30歳以下の男性では50mm)
2) R1+S3≧20mm
1)は水平面(横断面)における高電圧、2)は前額面における高電圧で、この両者から立体的な心臓起電力の高電圧を評価します。この基準値は、日本人正常例の計測値の上界98%tileに基づいています。この基準値を用いる根拠を下表に示します。これらの2所見を比べると、1)の方が2)よりも陽性率が高いのですが、これは左室肥大時の心起電力変化が前額面よりも、水平面(横断面)に表現されやすいことに起因していると思います。
基準項目 | Sokolow- Lyon 基準値 (mm) |
正常上界(mm) | |||||
95%上界 | 98%上界 | ||||||
青年男性 | 青年女性 | 壮年男性 | 青年男性 | 青年女性 | 壮年男性 | ||
RV5(6)+SV1 | 35 | 44 | 35 | 34 | 50 | 38 | 36 |
RT+SV | 25 | 14 | 13 | 15 | 20 | 15 | 17 |
この基準値の剖検例における偽陽性率、陽性率;高血圧臨床例、X線的左室肥大例における陽性率を下表に示します。
基準項目 | 剖検例(%) | 高血圧 臨床例(%) |
X線的左室 肥大例(%) |
|
正常心 | 左室肥大心 | |||
RV5(6)+SV1≧40(50) | 4.4 | 39.1 | 40 | 26 |
RT+SV≧20mm | 0 | 34.8 |
2) Cornell voltage (コルネル電圧基準)
上記のSokolow基準は、長い間にわたり、世界的に広く用いられてきましたが、最近、Cornell voltage, Cornell productという新しい左室肥大心電図診断基準が広く用いられるようになりました。これらは米国のCornell大学の研究グループが、心電図で左室肥大を伴う高血圧例を対象として行ったアンジオテンシン受容体拮抗薬ノロサルタンの有効性を検討した有名な大規模研究であるLIFE研究で用いた心電図左室肥大診断基準であるために、このように名付けられました。
Cornell voltage (Cornell電圧基準)とは下表に示す基準です。しかしこの基準値は日本人には厳し過ぎ、偽陽性率は低いが、陽性率が低いため、私たちは日本人正常例の計測値に基づいた下表に示すような補正基準値を用いることを提案しています。
Cornell 基準(RaVL+SV3) | ||||
/ | 原値 | 補正値 | ||
男性 | >28mm | ≧23mm | ||
女性 | >20mm | ≧16mm |
Cornell大学の研究groupが、左室肥大心電図診断基準項目として RaVLおよびSV3を用いたのは次のような理由によります。
彼らは心エコー図計測により求めた左室容積を左室肥大の指標として用いました。心エコー図から左室容積を算出するには、僧帽弁尖直下で記録したMモード心エコー図の計測値を用いて下式により算出します。
LVM=1.04(IVS+LVID+PWT)3−(LVID)3−14g
上式の略号は下記のようなMモード心エコー図の計測値です。
LVM:左室容積(左室体積)
IVS:心室中隔厚
LVID:拡張終期左室内径
PWT:左室校壁厚
このようにして求めた左室容積を体表面積で補正した値(LVM/BSA)が 下記条件を満たす場合を左室肥大ありと判定します。これらの基準値は正常例での計測値の分布の98 percentile値を用いています。
男性≧132g/m2
女性≧109
g
/m2
彼らの研究によりますと、V3のS波の振幅が男女共に左室容積と最もよく相関することが明らかになりました。そして、V3のS波の振幅とは無関係に、他の肢誘導および胸部誘導の振幅と左室容積との間のstepwise
linear corellation
analysisを行い, その結果、aVLのR波が、V3のS波の振幅とは無関係に、左室容量と相関することが明らかになりました。
Cornell大学研究グループは、以上の研究成績に基づいて、左室肥大の心電図診断基準としていわゆるCornell
vlotageを発表しました。
(Casale PN et al:Electrocardiographic detection of left ventricular
hypertrophy: Development and prospective validation of improved criteria.ACC
6:572,1985)
3. Cornell product
Malloyら(1992)は、心電図におけるQRS間隔と電圧(振幅)との積が、電圧ないしQRS間隔単独に比べて左室容積(left ventriculzar mass)とよく相関するとし、220例で生前の心電図と剖検的に求めた左室容積とを比較しました。
左室容量を体表面積で補正した左室容量係数(LV mass index)が、男性では>118g/m2、女性では>104g/m2を左室肥大があると定義し、95%の特異度におけるCornell productの感度とCornell voltageの感度を比較しています。
その結果, Cornell voltageの感度は36%(92例中34例)でしたが、Cornell productのそれは51%(95例中48例)と高い感度を示しました。このCornell
productの感度は, RVL, SV3の振幅,TV1の振幅、QRS間隔およびV1のP terminal force, 性別の6指標を用いた多重論理回帰指数による左室肥大診断の感度(44.2%,
42/95例)よりも高い感度を示しました。
下図は、Molloyらが示した。Cornell product, Cornell voltageおよQRS間隔の何れが左室肥大の診断に適するかを検討したROC曲線です(receiver operatiing charactleristic curva,受診者特性曲線)です。ROC曲線は、診断基準の制度比較などの研究に良く用いられる研究手法です。このROC曲線が左上方に変異するほど、診断基準としての精度が高いと判断されます。この図から分かるように、Cornell productはCornell voltageよびQRS間隔単独よりも左室肥大診断基準として優れていることを示しています。
Cornell productを臨床に使用する際の実際の値については、下記例示するように研究者により異なった値が示されている。
1) JSH2009 : >2440mm・msec
2) Braunwald's Heart Disease12):>2436mm・msec
3) 田淵、沢山22):>1700 mm・msec
実際、Cornell productの原値を臨床例に適用してみますと、偽陽性率は低いのですが、陽性率も著しく低いとの結果を示しましたので、Cornell votageと同様に日本人正常素因電図の計測結果にもとづいてCornell prodluctの補正基準値を下表のように作成しました。
Cornell product(Cornel volltage(mm)×QRS間隔)(msaec) | ||
/ | 原値 | 補正値 |
男性 | 2440mm・msec | ≧2000mm・msec |
女性 | 2440mm・msed* | ≧1500mm・msec |
*女性のみ原値では、(RaVL+SV3+4)×QRS間隔で算出。 |
その結果、現在、私が用いている心電図による左室肥大心電図診断基準は下表の基準です。
Sokolow基準補正値 | R1+S3≧20mm | ||
RV5(6)+SV1≧40mm (<30歳以下の男性では50mm) |
|||
Cornell voltage 補正値 |
(RaVL+SV3) |
男性 | ≧23mm |
女性 | ≧16mm | ||
Cornell product 補正値 |
(RaVL+SV3)×QRS間隔 | 男性 | ≧2000mm・msec |
女性 | ≧1500mm・msec |
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2.左室収縮期負荷と拡張期負荷
血行動態的心室負荷様式の相違により心電図に特徴的所見が出現することがCabreraらにより指摘されてから、血行動態と心電図所見との関係に注目が集まりました。現在見る心電図所見は、その人における血行動態的負荷の総括的所見を反映しています。
下表に各心室の血行動態的負荷様式の差による心電図所見の特徴と、各負荷様式を起こす代表的基礎疾患名を示します。
分類 | 心電図所見 | 基礎疾患 |
左室収縮期性 負荷 |
1.左室誘導 (T, aVL, V5, 6)
のQRS波の高電圧、 2.QRS-Tベクトル夾角拡大(左室誘導の陰性T波) 3.初期中隔ベクトル (V1のr波, V5, 6のq波)減高。 4.左室誘導での心室興奮時間遅延は著明でない。 |
高血圧、 大動脈狭窄、 大動脈縮窄、 肥大型狭心症。 |
左室拡張期性 負荷 |
1.左室誘導(T, aVL, V5,6)
のQRS波の高電圧、 2.QRS-Tベクトル夾角は拡大しない(左室誘導の 陽性T波)、 3.初期中隔ベクトル(V1のr波, V5, 6のq波)増大、 4.左室誘導での心室興奮時間遅延 |
大動脈弁閉鎖不全、 心室中隔欠損、 動脈管開存、 僧帽弁閉鎖不全。 |
右室収縮期性 負荷 |
いわゆる右室肥大心電図を示す。 1) QRS軸の右軸偏位、 2) 右側胸部誘導R波の高電圧, R/S比増大、 3) 左側胸部誘導のS波増大, R/S<1。 |
肺動脈狭窄、 フアロー四徴症、 僧帽弁狭窄、 Eisenmenger症候群。 |
右室拡張期性 負荷 |
いわゆる不完全右脚ブロック所見を示す。 1) V1のrsR′型、 2) T, V5, 6の幅広いS波。 |
心房中隔欠損(二次孔)、 三尖弁閉鎖不全、 肺動脈弁閉鎖不全、 急性肺性心 (急性肺塞栓症) |
しかし、すべての場合に肥大心電図をこのように収縮期性負荷ないしは拡張期性負荷の2種類に確然と区別できるわけではありません。収縮期性負荷の結果 心不全に陥り、心臓の拡張が起こると、収縮期性負荷所見に加えて拡張期性負荷所見が加わり、心電図所見が修飾を受けます。
また拡張期性負荷疾患でであっても、収縮力が低下すると通常程度の収縮でも過剰負荷となり、拡張期性負荷心電図を修飾します。従って、心電図による血行動態的負荷様式の診断は、概念的な一面を持ち、限界があることも認識しておく必要があります。
QRS−T夾角拡大とは、QRS波が陽性の誘導でT波が陰性になる所見で、QRSベクトルとTベクトルとが相反する方向に向かう所見を意味します。すなわち、左室側誘導(T,aVL,V5,6)でR波は高電圧を示して高い陽性波をしめしますが、これらの誘導でT波は初期には平低、進行例では深い陰性波を示すようになります。
初期中隔ベクトルとは、心室興奮初期において心室中隔を左から右に向かう興奮波により作られる心起電力で、左室収縮期負荷の際には中隔繊維化などのために小さくなります。他方、左室拡張期負荷では、中隔肥大のために増大します。このベクトルが増大しますと、T、V5,6ではq波がふかくなり、V1のR波が幾分高くなります。このベクトルが減少すると、V1,2のR波の減高、V5,6 のq波の減高などが見られます。
下図はに、高血圧症の68歳女性の心電図が、典型的な左室収縮期性負荷の所見を示しています。左室収縮期性負荷(左)および拡張期性負荷(右)の典型例の心電図を示します。
左室収縮期性負荷 |
下図は、大動脈弁閉鎖不全症例の心電図で、典型的な左室拡張期性負荷の所見を示しています。
左室拡張期性負荷 |
1.右室肥大の心電図診断基準
下記の3項目の内、何れか1つを満たせば右室肥大と診断します。
1) 右側胸部誘導(V1)でR/S≧2,かつRV1≧5mm、
2) +110度を超える著しいQRS軸の右軸偏位、
3) V6のR/S<1。
2.基礎疾患による右室肥大心電図の修飾
右室肥大心電図は、基礎疾患の特徴により特有の所見を示すため、画一的に上記の診断基準を適用することは出来ません。すなわち、僧帽弁狭窄、ファロー四徴、心房中隔欠損症、肺動脈狭窄症、肺気腫の5種類の基礎疾患によりかなり特徴的心電図所見を示します。
1)僧帽弁狭窄:左房負荷(僧帽性P波)所見を示す。QRS波の振幅はそれほど高くならず、右軸偏位の程度も軽い。V1は時にRSR’型を示すが、R’波の幅は広くなく、不完全右脚ブロックの表現ではなく、右室肥大心電図の中間過程の反映である。
2)ファロー四徴:典型的な右室肥大心電図を示す(上記基準を満たす)。T波はV1では陰性の例もあるが、V2,3で
陰性になることはない。P波の振幅は高い。
3)肺動脈狭窄、肺高血圧症:典型的な右室肥大心電図を示す(上記基準を満たす)。T波はV1〜3(〜4,5)などの広範な胸部誘導で陰性である。
4)心房中隔欠損症:右室拡張期負荷(容量負荷)を反映して不完全右脚ブロック所見を示す(右室流出路肥大の表現)。
P波は高く、かつ幅が広い(左房負荷の合併)。
5)肺気腫:QRS波の振幅は低く、V1でのR波増大よりも、V5,6でのS波の増大を示す。P波は幅が狭く、
尖鋭である
3.右室の収縮期性負荷(圧負荷)と拡張期性負荷(容量負荷)の心電図
右室負荷疾患であっても、結構動態的負荷様式により下記の如く特徴的心電図所見を示す。
血行動態的 負荷様式 |
心電図所見 | 疾患 |
収縮期負荷 | 右室肥大心電図 (上記の基準) |
肺動脈狭窄症、原発性、二次性肺高血圧症、 僧帽弁狭窄症、アイゼンメンゲル複合、 フアロー四徴症 |
拡張期負荷 | 不完全右脚ブロック | 心房中隔欠損症、三尖弁閉鎖不全、 エプスタイン奇形、肺静脈寒流異常 |
4.右室肥大を起こす各種の基礎疾患の心電図
1)僧帽弁狭窄症
下図は、36歳、女性の僧帽弁狭窄症例の心電図である。
心電図所見:QRS軸の右軸偏位;V1,2のR波増高、V5,6のR波の低振幅;T、UのP波の幅の増大と結節形成(僧帽性P);V1のP波の二相化、陰性相の幅の増大などの所見が右室肥大を示している。
僧帽弁狭窄(36歳、女性) |
2)ファロー四徴症
下図はファロー四徴症の12歳、男児の心電図である。
心電図所見:著しい右軸偏位、V1のR波、V5,6のS波の増大(右室収縮期負荷)。U、V1のP波の増高・尖鋭化(右房負荷)。V1のT波は二相性、V2のT波は陽性で、Tベクトルの後方偏位は著しくない(フアロー四徴に特徴的)。
ファロー四徴症(12歳、男児) |
3)肺動脈狭窄症
下図は、肺動脈狭窄症例の心電図である。
心電図所見:著しい右軸偏位、右側胸部誘導の極めて著しいR波増大、V5,6の深いS波(右室の収縮期性負荷)。V1のP波の先鋭化。V1〜4の陰性T波(Tベクトルの著明な後方偏位→高度の右室負荷の反映)。U、V、あVFの陰性T波(右室負荷)。
肺動脈狭窄症 |
4)二次孔型心房中隔欠損症
下図は、二次孔欠損型の心房中隔欠損症の心電図である。
心電図所見:V4R、1のQRS波のrsR’型、T、U,aVL,aVF、V3〜7の幅広いS波(不完全右脚ブロック)。(右室拡張期性負荷の表現)。QRS軸の右軸偏位(二次孔欠損に特徴的;一次孔、心内膜症欠損では左軸偏位)。
二次孔型心房中隔欠損症 |
5)肺気腫
下図は肺気腫例の心電図である。
心電図所見:肢誘導QRS波の低振幅;U、V,aVFのP波の増高と先鋭化;V1〜3のP波陽性相の先鋭化;QRS軸の右軸偏位、心臓長軸周りの時針式回転;V1,2のQRS波はrsR'S'波(右室肥大)、V1〜3のT波の陰性化(右室負荷)。
肺気腫 |
T.両室肥大の心電図所見
両室肥大の際には、左室肥大所見を中心として、これに右室肥大所見が合併します。下記の何れかを認める場合は両室肥大と診断します。
2.V5,6のR波の高電圧に加えて、不完全右脚ブロック、V1,2のR波増高、S波減高を伴う。
3.V1でR波が高く(R/S≧2), V5,6はqRS型で、R波が高く、S波が深い。
4.明らかな左軸偏位に加えて、V1,2のR波増高または不完全右脚ブロック所見を示す。
5.左室肥大所見に加えて、V1〜3の陰性T波、右房負荷所見を見る。
6.V5,6で高いR波と共に深いSを見る。
7.Katz-Wachtel phenomenon: 心室中隔欠損、動脈管開存などの両室肥大の際には、V2〜4に大きい二相性QRS波を見る。
U.両室肥大を起こす諸病態
1.連合弁膜症:大動脈弁膜症+僧帽弁膜症(三尖弁膜症)
2.アイゼンメンジャー症候群:心室中隔欠損症、動脈管開存症などの左→右短絡を有する左室拡張期性負荷疾患で、短絡血流量が多いと肺高血圧症を合併し、右室肥大を起こして、両室肥大心電図所見を示すようになります。
V.両室肥大心電図の実例
1)動脈管開存症+肺高血圧症
下図は、肺高血圧を伴う動脈管開存症の心電図である。
心電図所見:左側胸部誘導のQRS波は高電圧を示すが(左室肥大)、初期ベクトル(q波)は大きく、T波は陽性で、QRS-Tベクトル夾角の拡大所見はない(左室拡張期性負荷)。QRS軸は右軸偏位傾向を示し、右側胸部誘導でR波の振幅が高い(右室収縮期性負荷)。
肺高血圧を伴う動脈管開存症 |
2)肺高血圧を伴う心室中隔欠損症
下図は、肺高血圧を伴う心室中隔欠損症の心電図である。 心電図所見:左側胸部誘導のR波の振幅は高い(左室肥大)。V6のq波は深く、T波は陽性で、QRS−Tベクトル夾角の拡大はない(左室の拡張期性負荷)。QRS軸は右軸偏位を示し、右側胸部誘導(V1〜3)でR波の振幅増大外地汁恣意(右室収縮期性負荷)。
肺高血圧を伴う心室中隔欠損症 |