頻脈性不整脈

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期外収縮

 心臓における興奮形成が亢進することにより起こる不整脈を頻脈性不整脈といいます。頻脈性不整脈とは、このようにこのように興奮形成の亢進が主役であって、実際に心拍数が多いかどうかは問題でありません。それぞれの項目で詳しく説明しますが、例えば心房細動では、薬剤〔ジギタリスなど(強心剤)〕で房室結節での興奮伝導性が低下しますと、心室への興奮伝導は減少して毎分50前後になることも少なくありません。このように心拍数は少なくとも、心房細動という興奮形成の促進機序が基礎にあるために「頻脈性不整脈」に分類されます。

T.頻脈性不整脈の分類
  頻脈性不整脈には次のような種類があります。
   1.洞頻脈
   2.期外収縮
   3.発作性心頻拍
   4.心房細動
   5.心房粗動
   6.心室細動
  以下、これらについて説明します。

1)洞頻脈
  洞結節における興奮頻度が増加して、毎分100以上になる場合をいいます。詳細については洞調律(洞リズム)を御覧下さい。

2)期外収縮
 最も多い不整脈で、期外収縮を経験しない人は存在しないと言われるほどに普遍的な不整脈です。規則的な心拍が、過敏な心臓内中枢の早期の興奮により乱される状態をいいます。
 (1)期外収縮の種類
 期外収縮発生部位、focusの数、連結期、発現形式、代償休止期の有無により下の表のように分類します。

分類方法 分類 説明
発生部位 洞性 洞結節から出た期外収縮
心房性 心房から出た期外収縮
房室接合部性 房室接合部から出た期外収縮
心室性 心室から出た期外収縮
Focusの数 単源性 1個の異所中枢から出た期外収縮
多源性 複数の異所中枢から出た期外収縮
連結期 固定連結性 先行収縮との時間的関係が一定
移動連結性 先行収縮との時間的関係が不規則
発現形式 二連脈(二段脈) 1個の正常収縮に1個の期外収縮
が続くリズム(2個の正常収縮に1個
の期外収縮が続く場合を呼ぶ場合も
ある)
三連脈(三段脈) 1個の正常収縮に2個の期外収縮が
続くリズム(2個の正常収縮に1個の
期外収縮が続く場合を呼ぶ場合もある)
代償休止期の有無 間入性 基本リズムの間に期外収縮が余分に
入り込む。徐脈時などに出現した心室
期外収縮などがこの形をとる。
完全代償性 期外収縮の後に休止期があり、期外収縮
を含む基本リズムの間隔は基本周期の
二倍と等しい。この休止期を「脈拍の欠滞」
と感じ、本人は「脈がとぶ」と訴える。心室
性期外収縮がこの形を示す。
不完全代償性 期外収縮の後に休止期があるが、期外収縮
を含む基本リズムの間隔は、基本リズムの
二倍より短い。心房性期外収縮、房室接合部
性期外収縮などの際にみる。

(2)期外収縮の心電図
 以下に各部位から生じた期外収縮の模型図を示します。
諸種の期外収縮心電図のシエーマ

A:洞性期外収縮:基本リズムと同じ心電図波形(PーQRS-T)の早期出現。a=c>b
B:心房性期外収縮:変形した心房波(P波)の早期出現。a<b+c<2a
C:房室接合部性期外収縮:逆伝導性P波の早期出現、またはP波を伴わない基本リズムと類似した心室群の早期出現。a<b+c<2a
D、E:心室性期外収縮:P波が先行しない変形した心室群の早期出現。b+c=2aの場合は代償性、b+c=aの場合は間入性。
略語説明:P:期外収縮,a:基本リズムの心周期、b:、c:期外収縮の開始からそれに続く正常収縮までの時間。

(3)期外収縮心電図の実例
 以下に各種の期外収縮の心電図の実例を示します。

 1.心房性期外収縮(洞不整脈と心室内変行伝導を伴う心房性期外収縮)

心房性期外収縮(心室内変行伝導を伴う)

 洞不整脈があります。第3心拍のT波が他の心拍のT波と異なった波形を示しています。これはT波に心房性期外収縮のP波(P)が重なったためです。先行収縮との連結期が短いため、その不応期の影響を受けて心室群波形が少し変形しています。

 2.房室接合部性期外収縮
房室接合部性期外収縮の心電図

第4心拍に、逆伝導性P波(下向きのP波)の早期出現を伴う心拍を認めます。心室群は、先行収縮の不応期のために軽度の変形を認めます(心室内変行伝導)。代償休止期は非代償性です。

3.心室性期外収縮(完全代償性および間入性)
心室性期外収縮(間入性、完全代償性)

変形したP波を伴わない心室群の早期出現を認めます。この記録には4個の心室性期外収縮を認めます。第1、第3の期外収縮は完全代償休止期を持つ心室性期外収縮で、第2、第4は間入性期外収縮です。

(4)期外収縮の臨床的意義

期外収縮の臨床的意義は、その種類と基礎疾患の有無により著しく異なります。

種類 臨床的意義
洞性期外収縮 洞不整脈の一種とも考えられ、あまり臨床的意義
はありません
心房性期外収縮 散発する場合は臨床的意義はありません。
多発する場合は、心房細動に移行する例
があります。
房室接合部性期外収縮 心房性期外収縮に準じます。
心室性
期外収縮
器質的基礎疾患
がない場合
あまり臨床的意義がなく、放置して差し支えありません。
器質的基礎疾患
がある場合
基礎疾患の種類と期外収縮の種類に依存します。
心筋梗塞、特発性心筋症、QT延長症候群などによる
場合は治療の必要があります。期外収縮の種類としては、
多形性、連発性、連結期が短いものなどは危険な場合
があり、厳重な観察と治療が必要です。


心室性期外収縮の重症度評価に広く用いられているLown分類を下表に示します。
Lown分類(度) 心電図所見
期外収縮なし。
稀発性、単発性
頻発性(1/分、または30/時)
多源性
反復性
4a 二連発(couplets)
4b 多連発(salvos)
R on T

R on T型とは、心室性期外収縮が先行収縮のT波の頂点の近くに重なるような形で出現する場合を言い、この時期は心室筋の興奮性が亢進しているため(過常期)、心室頻拍や心室細動を誘発し易いと考えられています。以下にR on T 型心室性期外収縮から心室細動に移行した例の心電図を示します。

心室性期外収縮連発 短い連結期で心室性
期外収縮が連発している。
一過性心室細動 短い連結期の心室性
期外収縮に引き続いて
心室細動に移行している。

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