洞調律タイトル

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 正常例では、心臓拍動は右心房上部にある洞結節で規則的に作られます。そのため、洞結節はペースメーカーとも呼ばれています。洞結節の興奮は、微弱なため、心電図には現れません。洞興奮が心房に伝わり、心房筋が興奮した結果としてP波を描きます。

 このP波の形は興奮がどの部位で作られたかにより特徴的波形を示します。洞興奮により作られたP波には下記のような特徴があり、洞性P波と呼ばれます。すなわち、洞性P波は、T誘導で陽性、aVRで陰性、V5,6誘導で陽性です。もし、P波にこのようn特徴がない場合は、そのP波は洞結節以外の場所で作られた刺激により生じたものと考えられ、異所性P波と呼ばれます。

 洞リズムには、下記の4種類があります。


正常洞調律 心房興奮頻度が60〜100/分の洞リズム
洞徐脈 心房興奮頻度が毎分60以下の洞リズム
洞頻脈 心房興奮頻度が毎分100以上の洞リズム
洞不整脈 洞リズムであるが、心房興奮のリズムが不規則な場合

 心房興奮頻度は、正確には心電図でP波が1分間に何個でるかにより決めますが、通常は心房興奮頻度と心室興奮頻度とは同じですから、脈拍数で代用出来ます。洞不整脈というのは、洞リズムですが、そのリズムが不規則な場合を言います。厳密には最も長いPP間隔と最も短いPP間隔との差が0.16秒以上の場合に洞不整脈と言います。

 しかし、洞リズムの場合は、特殊の場合を除いて洞不整脈、洞徐脈および洞頻脈は病的でない場合が大部分です。めまい、失神などの症状がなければ、洞徐脈や洞不整脈があっても何ら心配ありません。洞不全症候群と言って、洞結節の病変(変性、壊死、炎症など)により洞結節が障害され、そのために洞徐脈を起こす場合です。

 この場合は、徐脈の程度が強く、脈拍数が通常45/分以下に減少します。このような場合も、運動により心拍数が増加するようならあまり心配ありません。この場合は洞不全症候群ではなく、心臓抑制神経である迷走神経の機能亢進による機能的なものと考えられ、病的なものではありません。


 小児、若年者などでは洞不整脈は正常例の大部分に見られます。また、逆に糖尿病性神経症などがある例では、かえって洞不整脈が認められなくなります。これは心臓を支配している自律神経が糖尿病のために障害を受けるためです。洞頻脈では、通常、脈拍(心拍数)を増加させる原因があります。運動、発熱、精神興奮などです。しかし、このような生理的原因がなく、著しい洞頻脈を示す場合には、甲状腺機能亢進症、貧血などが合併している場合がありますから、その方面の検査が必要です。

 下図は、正常洞リズム、洞頻脈、洞徐脈、洞不整脈の心電図を示します。

洞調律の諸相(正常洞調律、洞徐脈、洞頻脈、同不整脈)
A:正常洞リズム,B:洞徐脈、C:洞頻脈、D:洞不整脈

 洞不整脈には規則性洞不整脈と不規則性洞不整脈があります。
  1)規則性洞不整脈
 呼吸に伴う迷走神経緊張の周期性変動によるもので、吸気時に心拍数が増加し、呼気時に減少します。小児、若年成人に正常で見られる所見です。
  2)不規則性洞不整脈
 呼吸と無関係な洞不整脈で、高齢者、薬物の影響、洞不全症候群などの際に認められます。

 各種の洞不整脈の原因となる病態を表記します。

種類 基礎疾患(基礎病態)
洞頻脈 正常若年者、運動、精神興奮、交感神経緊張、発熱、心不全
洞徐脈 正常、迷走神経緊張、スポーツマン、洞不全症候群
洞不整脈(規則性) 呼吸性洞不整脈(正常)
洞不整脈(不規則性) 洞不全症候群、高年者
洞停止・洞房ブロック 洞不全症候群

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