3.左冠動脈中隔枝攣縮による左脚中隔枝ブロックの出現(長谷川浩一*)

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*本例は川崎医大・循環器内科 長谷川浩一先生(現:高松市屋島西町はせがわ循環器内科)の経験例です〕

 狭心症を有する48歳、男性に アセチルコリン50?gを左冠動脈内注入し、左冠動脈中隔枝の完全閉塞の出現と共に左脚前枝ブロックおよび右側胸部誘導のR波増大(左脚中隔枝ブロック)が一過性に出現し、注入終了1分後には注入前の心電図に復した。


<FONT size="3">左からアセチルコリン左肝動脈内注入前、注入直後、30秒後
左からアセチルコリン左肝動脈内注入前、注入直後、30秒後
および1分後の標準誘導心電図

 アセチルコリンの左冠動脈内注入直後の心電図では、右側胸部誘導(V2,3)のR波の軽度の振幅増大を認める。30秒後の心電図では著明なQRS軸の左軸偏位が出現し(左脚前枝ブロックの出現)、同時に右側胸部誘導においてST上昇、R波の振幅増大, R/S比の著しい増大が認められた。しかし、これらの所見は、1分後には注入前の状態に完全に復した。すなわち、本例は冠動脈攣縮性狭心症例であるが、アセチルコリンの左冠動脈内注入により、左冠動脈中隔枝の完全閉塞が起こると共に、左脚前枝ブロックおよび左脚中隔枝ブロックが出現し、そのため右側胸部誘導(V1,2)でR波増大とR/S比増大が出現した。

 下図に冠動脈造影写真を示す。  

左:アセチルコリン(Ach)左冠動脈内注入(ic)後、
左:アセチルコリン(Ach)左冠動脈内注入(ic)後、
右:ニトロール(ISDN)冠動脈内注入後(左前斜位)

 左冠動脈内にアセチルコリンを注入すること事により、冠動脈中隔枝が完全閉塞している。ニトロール(ISDN)の冠動脈内注入により冠動脈攣縮は緩解した。

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