第41例 定期健診で「正常心電図」と診断された29歳、男性例

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第41例 :
症例:29歳、男性
臨床的事項:特に循環器系の自覚症状がなく、元気に勤務している。1か月前の定期身体検査で心電図を記録し、下図のような記録を得た。担当医はこの心電 図を「正常範囲」と診断した。この健診担当医の心電図診断は妥当であるか?

質問:
1.リズムは?
2.QRS軸は?
3.この心電図の特徴的所見は、また心電図診断は?
4.本例に対してどのような生活指導を行うべきか?

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第41例解説:
この心電図の所見は下記の如くです。

1.リズム:洞調律。
2.QRS軸:正常QRS軸。
3.心電図波形:
  最も特徴的な波形は、V1, 2のQRS波形です。これらの誘導ではr’(R')波を認め、一見、不完全右脚ブロックに類似しています。しかし、不完全右脚ブロックでは、R' 波がsharpで、本例のR' 波とは異なっています。  

 下図に、Brugada症候群 (coved type、A〜C)、Brugada症候群 (saddle-back  type、D〜G)、心房中隔欠損症(二次孔欠損型、H〜J) にみる不完全右脚ブロック、および器質的基礎心疾患がない例(臨床的正常例)にみる不完全右脚ブロック(K〜L)を示します。

 臨床的正常例にみる不完全右脚ブロック(K, J)や心房中隔欠損症にみる不完全右脚ブロック(H〜J)では、R’波からST部への移行がsharpですが、Brugada症候群の saddle-back型では鈍的に移行している様子が分かると思います。この点が両者の鑑別に重要です。

4.心電図診断:
  従って、この心電図はBrugada症候群のsaddel-back型と診断するべ きものであり、決して正常心電図ではありません。

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