第24例 頻脈性心房細動

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第24例

症例:59歳、女性
主訴:心悸亢進発作
臨床的事項:数年前から、時々、激しい心悸亢進発作が起こるようになった。今回も数時間前に急に動悸が起こり、気分が悪くなり、胸苦しい気分が生じた。そのため に、救急車で急患として来院した。 理学的所見は正常。  下図は本例の心電図である。

質問:
1.この不整脈の診断は?

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第24例解説

 救急病院担当医はこの心電図を「発作性上室性頻拍」と誤って診断しています。 V1-3の心電図を見て、そのように診断したのではないかと思います。しかし、心電図 診断の際には、全ての誘導を見ることが大切で、標準肢誘導(第1,2,3誘導)の前半を見ると、リズムの不整が明らかです。標準肢誘導の前半を見ると、P波が無 く、基線が不規則に動揺し、心房細動波(f波)の存在を示しています。また、標準肢誘導後半は一見規則的のように見えますが、詳細に観察しますと、RR間隔は不規則 です(絶対性不整脈)。  

心房細動の際には、下記の3所見が必須条件です。
  1) P波の消失
  2) f波の出現(f頻度: 300〜600/分)
  3) 絶対性不整脈  
 絶対性不整脈とは、全く規則性がない不整脈をいいます。

 心房細動には下記の2種類があります。
   (1) 発作性心房細動
  (2) 持続性心房細動(慢性心房細動)  
 
 一般に発作性心房細動は、頻脈性心房細動の形を取り、発作性心頻拍と誤られる場合がありますが、注意深く心拍を観察すると何らかの不整を認めます。

 心房細動の場合、心拍数と脈拍数との差を脈拍欠損 (pulse deficit) と呼びます。 この値が10/分以上の場合は、心臓の機械的効率が悪く、心不全に陥る危険がありま す。心室収縮が起こってはいるが、末梢まで脈波を伝達し得るだけの十分な血液駆出を行うことが出来ない状態にあると考えられます(無効収縮)。

 これは、頻脈のために拡張期 が短くなりますと、Starling の心臓法則(心拍出量は先行収縮の拡張期の長さに比 例する)により心拍出量が減少し、駆出される血液量が少なくなります。こ のような場合、ジギタリスを投与すると、徐脈とともに脈拍欠損が減少ないし消失します。このような状態になるまでに投与されたジギタリス量がジギタリスの飽和量です。

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