第23例 右室拡張期性負荷(不完全右脚ブロック,心内膜床欠損)

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第23例:
症例:15歳、男児
主訴:運動時のチアノーゼと呼吸困難
病歴:生下時から先天性心疾患を指摘されている。安静時にはチアノーゼは著明でないが、運動によりチアノーゼが出現し、呼吸困難も出現する。
臨床的事項:心基部第2音は幅広く分裂し、呼吸性変動は少ない。肺動脈領域(2L) に4度の駆出性収縮期雑音を聞き、心尖部には4〜5度の逆流性収縮期性雑音を聞く。
本例の心電図を下図に示す。

質問:
1.リズムは?
2.QRS軸は?
3.本例の心電図診断は?
4.どのような疾患が考えられるか?

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第23例解説

1.リズムは?  洞調律
2.QRS軸は?  左軸偏位(著明)

3.本例の心電図診断は?  
 1) 左脚前枝ブロック:QRS軸は−45度以上の著明な左軸偏位ですから、「左脚前枝ブロック」と診断されます。
 2) 不完全右脚ブロック:V1のQRS波がrSR'S'型を示しており、QRS間隔>0.12 秒ですから「不完全右脚ブロック」と診断されます。  
 3)  左室肥大:R1+S3=19+18=37mmと明らかに左室肥大の診断基準値(≧20mm)を超 えていますから左室肥大と診断されます。胸部誘導は1/2の感度で記録されており、 胸部誘導でもQRS波の高電圧があります。  
 4) 右室過負荷(right ventricular strain): V1〜4のT波が陰性で、Tベクトルの著明な後方偏位が存在し、この所見は右室過負荷を反映しています。

4.どのような疾患が考えられるか?
 先天性心疾患で不完全右脚ブロックがありますので、右室の拡張期負荷疾患を考えなくてはなりません。右室の拡張期性負荷を起こす先天性心疾患の代表的疾患は心房中隔欠損症です。心房中隔欠損症の二次孔型ではQRS軸が正常軸ないし右軸偏位を示しますが、一次孔ないし心内膜床欠損症では著明な左軸偏位を示します。従って、本例は一次孔欠損型の心房中隔欠損症または心内膜欠損症が最も考え易いと思います。労作時にチアノーゼが出現する点は、心内膜床欠損症の方が考え易いと思います。

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