副調律タイトル

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1. 副調律 (parathythmia) とは 
  洞結節以外に、独自のリズムで動く異所中枢があり、心室(又は心房)が二重支配を受けている状態を副調律という。このような異所中枢を副調律中枢 (pararhythmic center) といい、多くの場合は心室内にある。

2.心電図所見 
  連結期が異なる期外収縮があり、これらの期外収縮が一定の基本周期またはその整数倍で出現している際には副調律を考える。下記に、副調律の心電図を示す。

 副調律の心電図

 心電図所見:
 各誘導共に2種類の心室群を認める。この内、PR間隔が不定な心拍(T誘導の第1, 4, 7心拍; U誘導の第3, 6心拍;V誘導の第3, 6心拍)は、他の心拍、(洞性心拍)とは異なった一定の波形を示し、かつ一定間隔で出現している。このように、先行心拍との連結期が不定で、独自のリズムで出現する心室群を認めた場合は、副調律と診断する。

 V誘導の第3番目のP波は洞性P波であるが、この直後に出現しているQRS波は洞性興奮の伝達によるものではない(PR間隔が短かすぎる)。V誘導の第2番目の副調律性心室群(変形した大きいQRS波)のT波には、正常周期で出現したP波が重なっている。

 このP波は長いPR間隔(0.44秒)の後に心室に伝達している(V誘導の最後から第3番目のQRS波)。このPR間隔延長は、先行収縮により作られた相対不応期によるものである。そのため、この部分でRR間隔が短縮している。

 下図は、副調律の別の例の心電図である。

副調律の心電図

 心電図所見:
 *印で示した変形した心室群が独自のリズムで出現している。先行収縮との間隔(連結期)は不定である。このような心室性期外収縮様の変形した心室群が不定の連結期で出現している場合には、変形した心室群の出現間隔が一定でないかどうかを確かめなくてはならない。もし、この間隔が一定であれば副調律と診断する。

 3.副調律の出現機序
   副調律の出現には、洞結節以外の異所中枢(副調律中枢)の存在が必要で、多くの場合、この中枢は心室内にある(心室性副調律中枢)。しかし、副調律が成立するためには、(1)保護ブロック、(2)進出ブロック、の2つの機序の存在が必要である。下図は、これら両者の働きを示す模型図である。

副調律時の進出ブロツクと保護ブロツクの機序
P:副調律性中枢,A:進出ブロック、
B:保護ブロック

  1) 保護ブロック (protect block):保護ブロックとは、副調律性中枢が、周囲の心筋の興奮により脱分極されないように保護されている機構をいう。 

  2) 進出ブロック (exit block): 副調律の基本リズムに相当した時点において、すでに先行収縮の不応期から脱していると思われるにもかかわらず、副調律性の興奮が認められない場合があり、このような現象を説明するために考えられた機序が進出ブロックという概念である。副調律性中枢は規則的に興奮しているが、、その興奮が周囲組織に出て行くのが妨げられるような何らかの機序が存在すると考えられ、この機序として進出ブロックという考えで説明されている。

4.臨床的意義
  副調律は、臨床的意義が少なく、このような不整脈を認めても、特に治療の必要はない。副調律性中枢は、異所性心頻拍症の原因となる場合がある。

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