10.急性心筋梗塞症

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 急性心筋梗塞症は、心臓性急死の最も重要な基礎疾患の1つです。急性心筋梗塞の死亡率は現在においても尚13〜20%と著しく高率です。これらの死亡例の半数は発作後24時間以内の死亡例であり、さらにその半数は発作出現後1時間以内の死亡例です。
 下表は急性心筋梗塞の死亡原因とそれらの頻度を示します。

死因 %
不整脈 47
循環不全(ショック+鬱血性心不全) 43
塞栓 8
心室破裂 2

 急性心筋梗塞から快復した例(慢性心筋梗塞)も急死の重要な危険因子です。New York Heart Association心機能分類T、U度に属する60歳以下の慢性心筋梗塞160例における予後調査成績によりますと、突然死は14例 (9.2%)に認められ、これらは全て症状出現後1時間以内の死亡でした。

 急性心筋梗塞における突然死予防対策
 急性心筋梗塞例では、発症後速やかに冠動脈造影、冠動脈形成術などの実施可能な専門病院に収容し、緊急冠動脈造影を行い、冠動脈の再疎通を図り、その後は冠疾患強化監視治療室(coronary care unit, CCU)に収容して、不整脈および血行動態をモニタし、不整脈、ショック、心不全などの合併症に対し手、速やかに適切な処置を講じ得るようにすることが是非必要です。

 又、慢性期にあっては、高血圧、高脂血症、喫煙などの冠危険因子の除去に努め、心筋梗塞の再発防止、心不全の出現防止を図ると共に、心電図、ホルター心電図などで経過を観察し、危険な不整脈の出現を認めたならば注意深く抗不整脈薬を使用します。心室頻拍、心室細動などの危険な不整脈が出現し、薬物療法でコントロール出来難い場合には、植込み式直流除細動器(ICD)によう治療も考慮することが必要な場合があります。

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