2.10 先天性QT延長症候群の治療

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 15年間にわたり経過観察した本症の予後調査成績によると、適切な治療を行わなかった場合の死亡率は53%であるが、適切な治療を行った場合の死亡率は9%と著しく低下することが報告されている。
 最近は、発作誘発因子、予後が遺伝子型により著しく影響を受けることが明らかとなり、生活指導および治療も遺伝子型に応じた指導ないし治療を行うことが大切であることが認識されてきた。

1.LQTの遺伝子型に応じた生活指導   

遺伝子型 生活指導
LQT1 厳しい運動制限(++++++)、ことに競泳、潜水、マラソン
(特に思春期前期の男性では運動制限が必要)
LQT2 運動制限(+++)、音刺激、出産前後
LQT3 運動制限は必要なし。


2.遺伝子型に応じた治療(ことに薬物療法)
  遺伝子型に応じた特異的治療法を下表に示す。

治療法 薬剤名 使用法 LQT1(LQT5) LQT2(LQT6) LQT3
β遮断薬 インデラル 0.5-4.0mg/kg/日 +++++ +++
Naチャネル遮断薬 メキシレチン 8−10mg/kg/日 +++ +++ +++++
Caチャネル遮断薬 ベラパミル 2ー5mg/kg/日 +++ +++ ++(?)
Kチャネル開口薬 ニコランジル 0.2ー0.5mg/kg/日 ++ ++ -
K製剤 アスパラK / ++ ++++ ++
ペースメーカー / ++ ++ +++++
植え込み除細動器(ICD) / ++++ ++++ +++++

 3. 左星状神経節切除:左第1〜第4交感神経節切除の併用が有効な場合がある。

 4.Torsade de pointesの治療
   QT延長症候群の死亡の直接的な契機は、torsade de pointesから心室細動に移行することによる。そのため、torsade de pointesに対する適切な治療を行うことは大切である。
 1)硫酸マグネシウム静注:30〜40mg/kgを5〜10分間に静注し、さらに必要なら1〜5mg/分で点滴静注。
 2)一時ペーシング:80〜120/分。
 3)イソプロテレノール点滴静注:2〜8μg/分で点滴。しかし、急性心筋梗塞症、狭心症、高血圧、遺伝性QT延長症候群には適当でない。
 4)原因薬剤の中止:抗不整脈薬、向精神薬など。
 5)電解質補正:低K血症、低Mg血症、低Ca血症などがあれば補正する。



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