.虚血性J波の諸相

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 虚血性J波の波形は、下記に示すように、単にJ波の新規出現、J波の振幅・幅の増大,ラムダ波(lamda wave、Λ波)、著明に上昇したST部と一体化した波形など、種々の波形を示す。

 1.狭義の虚血性J波
  1)J結節、J波の新規出現
  2)既存のJ波の顕著化(振幅、幅)
 2, 広義の虚血性J波(J波とST上昇の融合)
  1)Λ波(lamda wave、ラムダ波)
  2)単相曲線様波形(?)
  3)coved型波形

 下図にJ波の諸相を示す。

 coved型波形は、Brugada症候群の際に右側胸部誘導(V1,2)に見られるが、右冠動脈右室枝障害(閉塞、攣縮など)の際に典型的なcoved型Brugada心電図波形が出現することが報告されている。

 下図は、Shimizuらが報告した例の心電図で、急性下壁梗塞の際に、一過性右室枝閉塞を生じた際に記録された心電図である。入院時心電図では、下壁梗塞に対応して下方誘導(第2,3、aVF誘導)でのST上昇を認める。下図中央の右室枝閉塞時の心電図では, V 1-3にBrugada型心電図に類似したcoved型ST上昇波形が認められる。なお、このcoved型波形は、右室枝の再灌流に成功した後には正常化している。

 また、下図はNakazatoらの報告例(58歳、男性)で、右冠動脈近位部の高度狭窄に対してPTCA(経皮的冠動脈形成術)を行っていた際に、右冠動脈右室枝の完全閉塞を起こし、その際に右側胸部誘導に一過性に出現したcoved型Brugada心電図に極めて類似したST上昇波形である。

 下図は、徳島赤十字病院 日浅 芳一先生から提示を受けた61歳、男性の冠動脈攣縮性狭心症例でのエルゴノビン冠動脈内注入負荷試験時の第2誘導心電図の経時的記録である。負荷前の心電図のST部には著変を認めないが、エルゴノビン負荷4分後には完全房室ブロック所見を示すと共に著明な心室群の変形を認め、R波頂点に近い下行脚に小さい結節を認める。この波はJ波である可能性があり、著明なJ波と単相曲線様に上昇したST部との融合波形(J-ST融合)であると考えられる。

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