7.急性心筋梗塞例での虚血性J波

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8.一般地区住民ででのJ波出現率と長期予後

 急性心筋梗塞症発症時に著明なJ波を示し、心室細動、多形性心室頻拍などの重篤な心室性頻脈性不整脈を伴う例が多く報告されるようになった。Jastrzebskyら(2009)は虚血性心疾患でラムダ様波形を示す著明なJ波が出現した7例の心電図について報告しているが、それらの内 4例はST上昇型急性心筋梗塞であった。

 これらの4例中、ST上昇型急性心筋梗塞症を基礎疾患として持ち、特異なラムダ様ST上昇を示した例をJastrzebskyらの報告から引用紹介する。
(Jastrebsky M et al:Heart Rhythm 6(6):829,2009)

1) 71歳、男性、高血圧、急性心筋梗塞症(Jastrebsky らの第4例)

  ST上昇型急性心筋梗塞症で、発症0.6時間後に心室細動が出現した。責任冠動脈は回旋枝近位部。CK-MB頂値は691 IU/L、駆出分画 35%, 肺水腫状態で、発症時に心室細動を起こし、除細動後に再灌流療法のために入院した。入院時心電図は奇妙なST上昇波形を示し,QRS波に融合するST上昇を示す。このST部には最初の上向性ないし水平性時相を認めない。
 下図は、発症1時間後の心電図記録である。

71歳、男性、ST上昇型急性心筋梗塞症の入院時心電図(Jastrbsky報告の
第4例):発症1時間後の心電図である。第1,aVL,V6誘導心室群波形が
ラムダ型をしめす。第2,3,aVF,V1-4はそのreciprocalな波形を示す。

 下図は、本例の再灌流療法直後の心電図である。上図の発症1時間後の心電図に認めた著明なST-T部の変化はもはやほとんど認められなくなっている。しかし、なお第3、aVF誘導のQRS波の直後にスパイク状のJ波を認める。

 71歳、男性、ST上昇型急性心筋梗塞症の入院時心電図
(Jastrbsky報告の第4例):再灌流治療直後の心電図。上図
の発症1時間後の心電図に認められたような著明なST-T
変化はもはや認められなくなっている。第3,aVF誘導の直後
にスパイク状のJ波を認める

2)53歳、男性,ST上昇型急性心筋梗塞症(Jastrebsky報告の第6例)

 急性心筋梗塞症発症1.5時間後に心室細動が出現した。下図の心電図は発症2時間後の記録である。責任冠動脈病変部位は回旋枝第1辺縁枝、左前下降枝中央部。CK-MB頂値 165 IU/ml,軽度心不全状態にある。駆出分画40%。心電図所見としては、第1,2,3,aVF,V4-6誘導で急峻に低下し、T波と融合するSTST部を認める(巨大J波)。

53歳、男性、ST上昇型急性心筋梗塞症、発症2時間後の心電図。
第1,2,3,aVF,V4-6誘導で急峻に低下し、T波と融合するSTST部を認める
(巨大J波)。

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