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 最近は、一般家庭で蠅はあまり見かけなくなりましたが、昔は台所などは蠅が多く、各家庭は蠅を如何に退治するかに非常に苦労したものです。最も簡単な蠅取りの器具は下図のような「蠅叩き」で、要所、要所に蠅叩きを置き、蠅を見付けたらこれで叩くのですが、蠅の数が多いし、叩いた跡が不潔になったり、場所によっては蠅叩きを使いにくい場所もあります。

蠅叩き

 魚屋さんや肉屋さんなどの蠅が非常に多く、商品に蠅がとまると不潔になる様なところでは、天井から蠅取り紙をぶら下げて、これにひっついた蠅を退治する方法が一般的でした。しかし、一般家庭で天井からこのような蠅取り紙を沢山ぶら下げている光景は、著しく美観を害します。

蠅取り紙

 その点、ハイトリック(自動蠅取り器)は、理想的な蠅退治の機械であると思います。外観は室内備品のような外観をしていますので、居間や店先に置いたとしても不自然な印象を与えません。ゼンマイ駆動になっており、一回ネジを巻きますと10数時間働き続け、その駆動音も静かで環境を害することはありません。

 下図に我が家にあるハイトリックの写真を示します。

ハイトリックを上から見た図 ハイトリックを斜め上から見た図
ハイトリックを分解した写真 ハイトリックのモーター駆動部
ハイトリックの商標 ハイトリックの宣伝用パンフレット

 ハイトリックは、名古屋の尾張時計店、(現在:尾張精機製作所)が製作し、大正2年に特許権を取得し、大正8年から発売し、同社の人気商品になったそうです。その後、他社からも類似の製品が売り出されています。

 モーター室の隣の四角い柱状の板に酒、酢、砂糖(蜂蜜)を混ぜたものを塗布しておくと、蠅はその臭いに誘われてこの板に止まります。この四角の板は隣室のモーターと連動しており、ゆっくりした速度で回転しており、この板に止まった蠅も板に止まったまま回転し、柱状の板に止まった蠅は、この板の下にある部屋に閉じ込められ、孔を通って網のある部屋に入り込まざるを得なくなります。この網で囲まれた部屋は取りだし可能で、1日に1回取り出して、水に浸すなどの処置により捕らえた蠅を処理します。

 国内の展覧会などにもたびたび出展され、多くの賞を獲得し、「宮内省お買いあげ」と箱書きされていることから見ると、宮中でもハイトリックを使っていたものと思われます。パリ博覧会にも出品され、外国でも人気を博したと伝えられています。

 この装置は、1回ネジを巻くだけで10数時間ゼンマイが動き続ける点も便利です。森家にはこのハイトリックが2台あり、何れもモーターに少し注油しただけで、約100年近く経った現在でも元気に動き続けており、観光客の方々から大変興味を持って頂いています。

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