症例12.WPW症候群を合併したファロー四徴症の14歳,女性

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 症例:17歳,男性
 主訴:運動時の呼吸困難,心悸亢進
 現病歴:3歳頃,屋外に連れ出すと口唇にチアノーゼを認め,号泣・運動時などにもチアノーゼが出現するようになり,近医から先天性心臓病と診断され,その後は庇護的生活を送っていた。その後は,通常の生活時には症状はないが,過度の体動時には呼吸困難,心悸亢進,チアノーゼを生じ,時には失神することもある。
 現症:身長172cm,体重49kg,血圧114・48っmHg,脈拍数80/分。胸郭変形(−)。手指尖端にチアノーゼを認め,太鼓ばち指の所見を認める。
 聴診所見:肺動脈領域で粗いV度の駆出性収縮期性雑音を聴取し、心基部U音は単一で亢進している。
 検査所見:赤血球620万,白血球8,000,ヘモグロビン21.8g/dl, ヘマトクリット61%。 

 来院時の標準誘導心電図を下図に示す。

来院時心電図
来院時心電図

  本例の心臓カテーテル検査は次の如くである。

サンプル部位 圧(mmHg) 酸素飽和度(%)
上大静脈 7/2(3) 63.2
下大静脈 6/1(3) 65.0
右房 12/3(5) 67.9
右室漏斗部 49/8 /
右室流出路 98/6 79.0
右室流入路 88/8 74.0
肺動脈 23/10(14) 77.3
肺動脈楔入部 10/7(8) 99.0
大動脈 / 85.5

  以上の如く,本例は先天性心臓病,ことにファロー四徴症と考えられるが,心電図にはWPW症候群の心電図所見のみで,右室負荷所見は認められない。しかし,血行動態検査では右室流出路圧は98/6mmHg,肺動脈圧は23/10mmhgと,著明な右室-肺動脈圧較差を認め,当然 右室肥大が予想される。

 本例において,右室肥大心電図所見が認められない理由は何故か?

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