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慢性腎炎の治療には生活指導と食事療法が重要です。これは次の手順に従って行います。
1. クレアチニン・クリアランスの推定
まず、安田の推定式あるいは折田らの推定式を用いてクレアチニン・クリアランス〔Ccr(ml/分)〕を算出します。
(1)安田の推定式
男性: (176−年齢)×体重/(100×血清クレアチニン値)
女性: (158−年齢)×体重/(100×血清クレアチニン値)
(2)折田らの推定式
男性: (33−0.065×年齢−0.493×BMI)×体重(kg)÷血清cr(mg/dl)÷14.4
女性: (21−0.030×年齢−0.216×BMI)×体重(kg)÷血清cr(mg/dl)÷14.4
2. クレアチニンクリアランスの程度により下表を用いて腎機能障害の程度を判定します。
腎機能分類 | クレアチニン・クリアランス(ml/分) |
腎機能正常 | 91以上 |
腎機能軽度低下 | 71〜90 |
腎機能中等度低下 | 51〜70 |
腎機能高度低下 | 31〜50 |
腎不全期 | 11〜30 |
尿毒症期 | 10以下〜透析前 |
3. 蛋白尿および高血圧合併の有無により下表に従って指導区分を定めます。
腎機能分類 | 蛋白尿 1g/日未満 | 蛋白尿 1g/日以上 | ||
高血圧(-) | 高血圧(+) | 高血圧(-) | 高血圧(+) | |
腎機能正常 | E | E | E | D |
腎機能軽度低下 | E | D | D | C |
腎機能中等度低下 | D | D | D | C |
腎機能高度低下 | D | C | C | C |
腎不全期 | C | C | C | B |
尿毒症期 | B | B | B | B |
4. 上の表のB〜Eの何れに属するかにより、下表により生活指導を行います。
指導区分 | 通勤・通学 | 勤務内容 | 家事 | 学生生活 | 家庭・余暇活動 |
A.安静 | 不可 | 勤務不可 (要休養) |
不可 | 不可 | 不可 |
B.高度制限 | 短時間 (30分程度) (出来れば車) |
軽作業 勤務時間制限、 残業・出張・ 夜勤不可 (勤務内容による)。 |
軽い家事 (3時間程度)、 買い物(30分程度) |
教室授業のみ、 体育・部活動 は制限、ごく 軽い運動は可。 |
散歩、ラジオ体操 程度(3〜4メッツ 以下) |
C.中等度制限 | 1時間程度 | 一般事務、一般手作業・機械 操作では深夜 ・時間外勤務・ 出張は避ける。 |
通常の家事、育児は可。 | 通常の学生 生活、軽い体育は可。 文科系部 活動は可。 |
早足散歩、自転車 (4〜5メッツ以下) |
D.軽度制限 | 2時間程度 | 肉体労働は 制限、それ以外 は普通勤務、 残業・出張可。 |
通常の家事、軽いパート 勤務 |
通常の学生 生活、一般 の体育は可、 体育系部活動は制限 |
軽いジョギング、卓球、テニス (5〜6メッツ以下) |
E.普通 生活 |
制限なし。 | 普通勤務は 制限なし。 |
通常の家事、 パート勤務 |
通常の学生 生活は制限 なし。 |
水泳、登山、スキー、 エアロビクス |
5. 保存期慢性腎不全(Ccr<70ml/分)の食事療法
総エネルー (kcal/kg*/日) |
35が基準。ただし、年齢や運動量により 適正エネルギー量は28〜40の範囲になり得る。 |
蛋白(g/kg*/日) | 0.6以上、0.7未満。ただし、Ccr≧50ml/分以上で、 蛋白尿<1g/日であれば0.9前後で開始することも可。 |
食塩(g/日) | 7以下。 |
カリウム(g/日) | 低蛋白食が守られていれば通常制限しないが、 血清K値≧5.5mEq/L以上の時はカリウム制限を加える。 |
水分 | ネフローゼ症候群およびCcr<15ml/分以下では尿量 +不感蒸泄量とする。 |
リン(mg/日) | 低蛋白食が守られていれば制限なし。ただし、 尿中リン酸排泄量>500mg/日以上の時はリン 制限を加える。 |
*標準体重当たり。 |
(日本腎臓学会編:腎疾患の生活指導・食事療法ガイドライン、東京医学社、東京、1998を参照)
クレアチンクリアランス推定の安田の式は私が加えました(折田らの式は複雑なため)。