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 目次

乳幼児突然死症候群とは?
出生期QT間隔延長群が正常群よりもSIDSの危険が高い。
(先天性QT延長症候群のvariant(散発例、低浸透率例)
SIDS剖検例の凍結心筋標本ゲノムDNA解析
(SCN5AA変異例)
小児急死例が多発した家系の検討
(Brugada症候群の可能性)

1.乳幼児突然死症候群とは

 乳幼児突然死症候群(sudden infant death syndrome, SIDS) とは、それまでの健康状態および既往症からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および剖検結果によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群であると定義されている。

2.乳幼児突然死症候群の頻度

 その頻度は、報告により差があるが、出生2,000人あたり1人(0.05%)前後で、年間600〜700人の乳児が本症で死亡していると推定されている。本症の発症は生後2-3カ月にピークがあり、生後1月未満および9カ月以後は少ない。生後3カ月までは男児に圧倒的に多く、それ以後は発症の性差は少ない。

 早期新生児期にも突然死の発生を見るが、頻度は1%前後と少ない。生後1年以後の年齢層の急死例の中にもSIDSと診断せざるを得ないような例があるが、頻度は少なく、他の病態との鑑別を注意深く行わねばならない。SIDSは、このような発症危険期を乗り越えると、その後の一生は健康な生活を送ることが可能である。

 下図は、SIDSによる死亡数の年次別推移を示す。本症の発症とその原因(誘因)との疫学調査などによりし諸種の予防対策が講じられるようになり、本症による死亡例は減少してきた。

乳幼児突然死症候群(SIDS)による死亡例の年次別推移
SIDS年次別死亡率

3.SIDSの疫学的特徴
 SIDSの疫学的特徴として、下記のような事項が指摘されている。
 1)1歳未満、ことに6カ月未満の乳幼児に好発する。
 2)男児にやや多い。
 3)睡眠中に発生することが多い。
 4)寒い季節に多い。
 5)発作出現の数日前に、軽い感冒様症状を認めることがある。
 6)低体重出生児、人工栄養児に多い傾向がある。
 7)若い母親、妊娠中の管理が不十分な母親を持つ乳幼児に多い傾向がある。

4.SIDSの分類 SIDSは下記の2型に分類される。
 1)乳幼児突然死症候群:剖検により確認した例。
 2)乳幼児突然死危急事態(ATLE,apparent life threatenining event):未然型(near miss case) とも呼ばれる。乳幼児突然死危急事態とは、それまでの健康状態および既往歴からは死亡が予想できず、しかも観察者に死亡するのではないかと思わせるような無呼吸、チアノーゼ、顔面蒼白、筋緊張低下、呼吸促迫などの発作が起こり、その回復には強い刺激やその蘇生術が必要であったもの内、原因が明らかでない場合をいう。

5.SIDSの原因
 本症候群の原因は不明であるが、本症による死亡例の疫学調査から、下記のような諸要因が本症の発症と関係があると考えられ、SIDSによる死亡から乳児を守るために啓発活動が展開され、その結果、上表のようにSIDSによる死亡例は減少してきた。しかし、これらの諸要素がSIDSの真の成因であるか否かは尚不明である。現時点で、本症の発症に関係があるとされている因子には下記のようなものがある。

うつぶせ寝
柔らかい寝床、寝具類の使用
乳児の受動喫煙
人工栄養
添い寝
高体温(暖めすぎ)
未熟児
脳幹の呼吸中枢機能低下

 近年、遺伝子研究の進歩に伴い、遺伝子異常を原因とする致死的不整脈の研究が進歩し、乳幼児突然死症候群の中にも遺伝子異常に起因すると思われる例が多く含まれている可能性が多くの研究から指摘されるようになった。

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