進行性伝導障害とSCN5A変異との関連を
明らかにした最初の研究

(Schott J,Alshinawi C et al,1999)

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 心室内伝導障害の家族例としては、右脚ブロックの数家族が発表され、その原因となる染色体部位としては第19染色体(19q13.3)がしてきされていたが、遺伝子についてはこれまで明らかにされていなかった。

 Schottらは、150人以上の構成家族メンバーからなるフランス人の一家系において、多数例の心臓伝導障害例を認め、その臨床的および遺伝学的検討から、遺伝子SCN5Aの変異が進行性伝導障害(PCCD、Lenegre病、Lev病)の原因遺伝子であることを初めて明らかにした(1999)。下図にこの家系の家系図を示す。

●女性、phenotype;■男性,phenotype。
薄い色:病状不明例で、遺伝学的検討には含めなかった例。
+:SCN5A変異例、 −:SCN5A:変異を認めなかった例。
PM:ペースメーカー植え込み実施例。

 この家系を見いだした端緒は、Vー19例(女性)が「右脚ブロック、失神」、その兄弟であるV-14例が右脚ブロック、V-8例が「完全房室ブロック+失神」で来院したことがきっかけとなったとのことである。
 これらの家族メンバー中15例に臨床的および心電図的異常を認めた。これらの例のQRS間隔の平均は135±7msecで、心電図異常所見の内訳は次の如くである。これらの全例、器質的心疾患を持っていなかった。第U、第V世代の家族メンバーのうち、4名は失神または完全房室ブロックのためにペースメーカー植え込みを受けた。数人については長期間の経過観察を行ったが、伝導障害所見は加齢と共に増悪した。

心電図所見 例数
右脚ブロック
左脚ブロック
左脚前枝または後枝ブロック
PR間隔延長

このフランス人家系に属する例の心電図を例示する。

第U-1例:下図に示すように1986年(60歳時)に記録した心電図ではQRS間隔は120mseと拡大し、非特異的心室内伝導障害所見を示していたが、12年後(1998年、72歳時)に記録した心電図ではPR間隔延長(240msc)、QRS間隔延長および左脚前枝ブロック所見を示した。

症例U-1の心電図。左図の60歳時の心電図ではQRS
間隔は120mscと延長し、非特異的心室内伝導障害所見
を示す。12年後(右図)には左脚前枝ブロック所見に
進展している。

第Uー7例:完全左脚ブロック所見を示す。

第U-7例の心電図。完全左脚ブロック所見を認める。

第V-17例:完全右脚ブロック所見を示す。

第V-17例の心電図。完全右脚ブロック所見を示す。

 Schottらは、同時に進行性伝導障害を多数認めたオランダ人の小家系についても報告している。


 下図はその家系図である。発端者はU-3例で、出生直後から無症候性の第1度房室ブロック(PR間隔200msec)、右脚ブロック(QRS間隔:120msec)を認めた。兄弟3人も無症候性であったが、1例は右脚ブロック所見を示した。母も無症候性であったが、QRS間隔は拡大し(120msec)、非特異的紳士スナ委伝導障害所見を認めた。伝導障害所見を示した全例で遺伝子SCN5Aの異常を認めた。

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