早期再分極の分類

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1)早期再分極波の心電図的特徴
 
 Aizawaらは、特発性心室細動例において、、心室細動発作前の心電図のQRS波直後に低い結節状の波を認め、これが心室性期外収縮後の代償休止期後のようなRR間隔が延長した直後の心収縮においては、その振幅が増大する所見を認め、これを一種の心室内伝導障害の反映と考え、「Idiopathic ventricular fibrillation and bradycardia-dependent intraventricular block (Am Heart J 126(6): 1473-1474,1993)というタイトルで論文を発表している。

 この時点では、特発性心室細動の際に認められた心室早期再分極波を心室内伝導障害時のQRS波の一 部と考えているように見受けられる。従来、後棘と呼ばれていたこのようなQRS波に続く小さい低い結節状の波が、心室脱分極期の波ではなく、心室再分極期の波であることは、Boineauらの研究により明らかにされた。

 Boineau(2007)は、冠動脈バイパス手術の術前心電図において V4誘導に明らかなJ波を認める例で、手術中に心外膜面の多数の点で単極誘導電位図を記録して心外膜面における電位の等時間図(isochrone map) を作成した。

冠動脈バイパス手術前のV4でQRS波の直後に明瞭なJ波を認める。
Boineau JP:J Electrocardiology 40:3.e1-10,2007

 この際,Boineaは、心外膜面の36カ所から単極誘導電位図を記録し、多くの部位で記録した心外膜面電位図にJ波を認めたが、これらのJ波はすべての誘導部位において、内効果振れの終了後に認められた。内効果振れは、その部位への興奮の到達を示し、その部位が脱分極したことを示しているため、J波が記録されたすべての部位で、内効果振れの後にJ 波が記録されていることは、J波が脱分極終了後に出現した波、すなわち再分極期の波であることを示している。

 Gussakは、早期再分極波の特徴を下記の如く述べている。
   1) QRS波下行脚の明らかな結節ないしスラーが、上方凹の広範なST上昇を伴い、陽性T波に移行する。
   2) 中側方胸部誘導(V3-6)、下方誘導(第2,3,aVF)に出現し易く, aVRでは reciprocal なST低下を示す。
   3) J波の高さ、ST上昇度は著明に変動する。そのような状態はwaxing and waningと表現する(waxing=大きくなる、waing=弱まっている)。
 4) 心拍依存性があり、徐脈時には増大し、頻脈時(運動、高頻度ペーシング)には減高する。

 下図にAizawaらの論文から引用したJ波の徐脈時J波増強所見を示す。

心室性期外収縮後の長い代償休止期の
最初の心拍でJ波が著明に増大している。
(Aizawa Y et al: Am Heart J 126(4):1472,1993)

2. 早期再分極波の分類
 
 Hissaguereは、早期再分極をその出現誘導部位により下図の如く3型に分類している。
  1)下方早期再分極:第2,3,aVF誘導に早期再分極波を認める。
  2)側方早期再分極:V4-6に早期再分極波を認める。
 3)下側方早期再分極:第2,3,aVF.V4-6誘導に早期再分極波を認める。

下方早期
再分極
側方早期
再分極
下側方早期
再分極

 また、下表に示すように、Boineauは早期再分極を5型に分類している。

分類 J波を認める誘導
apical ERPV 前方早期再分極 V3,4
lateral ERPV 側方早期再分極 V5,6
anterioro ERPV 前方早期再分極 V1.2
inferior ERPV 下方早期再分極 第2,3,aVF
diffuse ERPV 広汎早期再分極 肢誘導+胸部誘導
Boineau JP: J Electrocardiology 40:3e1-3e10,2007

  最近、Brugada症候群の際の心電図所見としてはcoved型が重視され、V1,2誘導の心室群波形が1群抗不整脈薬静注負荷によってもcoved型にならず, saddle-back型にとどまるのみの場合はBrugada型心電図と呼ばない傾向があるが、これはBoineauのようにV1,2などの右側胸部誘導にJ波を認める場合は前方早期再分極と診断するべきであるとする考えが背景にあるためと考えられる。

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