日常診療におけるJ波起因と思われる不整脈

早期再分極目次へ

 早期再分極波は、特発性心室細動例で高率に認められ、この波を有する特発性心室細動例では有しない例に比べて心室細動の再発率が高いことが指摘されており、その臨床的意義は大きい。しかしながら、特発性心室細動による突然死は、心臓性突然死全体の5%程度であり(Circulaion 95:265, 1997)、平均年齢は36歳と報じられている(Viskin S et al:Am Heart J 120:661,1990)
 
 また、特発性心室細動の好発年齢である35-45歳、男性一般人口での特発性心室細動の推定出現率は3.4人/100,000人(人口10万人当たり3.4人)と報告されている(Rosso R et al:JACC 52(15):1231-1238, 2008)。

 実際、私どもの日常臨床において、何ら器質的基礎疾患がない不整脈例にJ波を認める場合があり、J波とこれらの不整脈の関連を考えさせるような例に遭遇する場合がある。以下、そのような3例について紹介する。

 第1例:45歳、女性

 主訴:動悸
 臨床的事項:1週間ほど前から動悸が出現するようになった。症状は軽く、生活に差し支えるほどではない。失神病歴、急死の家族歴はない。理学的所見:正常、血圧正常、胸部X線写真:正常。下図は本例の標準12誘導心電図である。

V1,2に明らかなJ波を認めるが、ST上昇は著明でない。

 下図は本例の不整脈発作時の心電図とV2の拡大図を示す。

45歳、女性、主訴:動悸

第2例: 17歳、男性
主訴:失神
病歴:皮膚科受診中に急に失神発作が出現し、皮膚科医から内科を受診するように勧められて受診した。失神中は脈拍微弱、不整があったという。外来担当医師が診察し、心電図検査の結果、「異常はないが、心エコー図検査のため、もう一度来院するように」と指示したが、その後は来院してはいない。

 下図は本例の標準12誘導心電図とV4の光学的拡大図を示す。

17歳、男性、失神発作。V4にJ波を認める。

 下図は本例のホルター心電図の実時間記録で、多源性心室性期外収縮の連発を認める。総心拍数は11万個/日、心室性期外収縮数 6,325個/日、心室性期外収縮2連発 110個/日。

第2例(17歳、男性、失神)のホルター心電図実時間記録

第3例:57歳、男性、不整脈 
  下図は本例の標準12誘導心電図で、下方誘導に明らかなJ波を認める。

57歳、男性、不整脈。下方誘導に明らかなJ波を認める。

 下図は本例のホルター心電図の実時間記録である。

第3例のホルター心電図実時間記録。明らかなJ波と
多源性心室性期外収縮が記録されている。

この頁の最初へ