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Brugada症候群における心室細動発作と自律神経機能

  Brugada症候群に特有の心電図所見であるV1-3のST上昇が諸種の方法による副交感神経刺激により著明となり、交感神経刺激によって正常化方向に近づくことは本症候群が提唱されたかなり早期から知られていました。本症候群の最も重要な合併症である心室細動発作の誘発(開始)にも、このような自律神経機能の関与があるかどうかも興味が持たれます。

 最近、使用されている植え込み型除細動器(ICD)には、ホルター心電図記録機能が付加されており、ICD装着例が心室細動発作を起こして除細動器が作動すると、その前後の心電図が連続的に記録されるようになっているとのことです。従って、この心電図記録を分析すると、RR間隔の変動から、心室細動発作の直前の状態が交感神経緊張状態にあったか、あるいは副交感神経緊張状態にあったかを知ることが出来ます。


 栗田らは、この問題についての検討結果を発表しています。すなわち、ICDを装着したBrugada症候群例で30回の心室細動発作時おホルター心電図を記録し、発作出現の時間帯について検討し、夜間(18時→6時)に出現した発作が28回 (93%)、昼間(6時→18時)に出現した発作は2回 (7%)で、明らかに心室細動発作は夜間に多発していることを発表しています(下図)。
Brugada症候群での心室細動出現時間帯
ICD付属ホルター心電計機能によるBrugada症候群
心室細動発作の検討(30回)
(栗田隆志ら:Jpn.J.Electrocardiol.Suppl.1:32,2004)

 これらの例で、RR間隔の変動の分析から、発作直前の自律神経活動を検討し、下図のような結果を報告しています。すなわち、迷走神経緊張を示すHFという指標が、非発作時に比べて発作直前には有意に増大していますが、交感神経緊張状態の指標であるLF/HFは、非発作時と発作直前との間に統計的有意差を認めませんでした。このことから、Brugada症候群においては心室細動発作直前には迷走神経緊張が増加していることが分かります。

Brugada症候群における心室細動発作と自律神経機能
ICD付属ホルター心電計機能によるBrugada症候群
心室細動発作の検討(30回)
(栗田隆志ら:Jpn. J. Electrocardiol.Suppl.1:32,2004)

  Brugada症候群において、心室細動発作の直前に迷走神経緊張が増加しているとしても、迷走神経緊張が進行的に増加し、それが心室細動を惹起するというように、本例に認められる迷走神経の緊張の動的増加が心室細動誘発の直接的な引き金になっているかどうかという問題があります。この点について栗田らは下図に示すような結果を得ています。 すなわち、発作直前の迷走神経緊張の動的変化としては、発作に向けて漸増した例が23.5%、一定であった例が58.5%、かえって漸減した例が17.6%という結果で、迷走神経緊張度の動的変化については一定の傾向は認められませんでした。

Brugada症候群における心室細動発作直前の<BR>迷走神経緊張の動的変化
Brugada症候群における心室細動発作直前の
迷走神経緊張の動的変化(17例)
(栗田隆志ら:Jpn. J. Electrocardiol.Suppl.1*32,2004)

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