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下方誘導(第2,3,aVF誘導)でBrugada型心電図
を示した例
Brugada症候群の心電図の特徴は、著明なJ波による右側胸部誘導(V1-3)におけるST上昇と右脚ブロック様所見であることは、Brugadaらの最初の報告以来、世界的に一致した見解です。しかし、右側胸部誘導の心電図波形は正常で、同様の変化(ST上昇が)第2, 3, aVF誘導に認められる特異な心電図所見を示す例がNakamuraらにより報告されました。この例は、左脚ブロック+下方軸を示す心室期外収縮、心室頻拍などを示し、この点でも典型的なBrugada徴候群に類似しています。
| 本例の基礎心電図(64歳、男性) (Nakamura,W, et al:J. cardiovas. Electrophysiol. 9:855,1998) |
また、下図は本例に見られた非持続性心室頻拍である。短い持続の心室頻拍が反復出現している。注目するべき点は、この心室頻拍の心室群波形が左脚ブロック+下方軸を示す点で、その発生部位(頻拍の起源)は右室心基部にあると考えられ、Brugada症候群の際に見る心室頻拍と同様の特徴を示している。
| 本例に見られた心室頻拍 (Nakamura,W, et al:J. cardiovas. Electrophysiol. 9:855,1998) |
経過:
頻脈発作に対して諸種の抗不整脈薬を投与した。まず、メキシレチンを投与したが無効であった。次いでジソピラミドを使用したが、副作用としての排尿障害のために中止した。クラス3抗不整脈薬は無効で、かつ著明なQT間隔延長を起こしたために中止した。そのため、1c群抗不整脈薬を使用した。
| フレカイニド 200mg/日、6日間投与後、第2, 3, aVF誘導で上昇を示した。 (Nakamura,W, et al:J. cardiovas. Electrophysiol. 9:855,1998) |
本例のST上昇の機序は不明であったが、心筋虚血によるとは考え難く、フレカイニド投与と関連して生じたと考えられるため、その投与を中止したところ、2日後には上昇していたST部は完全に正常化した。
しかし、フレカイニド中止により心室頻拍が再び出現するようになったため、フレカイニドを再度投与したところ、再び第2, 3, aVF誘導のST上昇が出現した。そのため、フレカイニド投与を中止した。
次に、フレカイニドに代わってピルジカイニド 150mg/日(分3)に変更したところ、心室頻拍は出現しなくなった。しかし、投薬開始3日後に、下図に示す如く、フレカイニド投与時に見られたと同様に第2,3,aVF誘導の著明なST上昇が出現した。この際、血中ピルジカイニド濃度は正常であった。そのため、ピルジカイニド投与を中止したところ、休薬翌日には心電図所見は正常化した。
| ピルジカイニド 150mg/日投与後に第2,3,aVF誘導でST上昇を示した。 (Nakamura,W, et al:J. cardiovas. Electrophysiol. 9:855,1998) |
このような報告は、世界的にも本例が1例あるのみですが、興味深い例です。なぜ、右側胸部誘導でST上昇を示さずに、第2, 3、aVF誘導にのみST上昇を示したかは興味あるところです。Goldbergerは、心臓電気軸の回転に下図の如く3つの軸を想定し、それらの各の軸の周りを定義しています。
| 心臓電気軸の回転(Goldberger、E,) A:身体前後軸周りの回転、 B:心臓長軸周りの回転、 C:身体横軸周りの回転 |
心臓電位軸の基本になる3つの軸と、それらの軸の周りの回転は以下の如くです。
1) 心臓長軸周りの回転
(1) 時針式回転
(2) 反時針式回転
2) 身体横軸周りの回転:
(1) 心尖の前方偏位
(2) 心尖の後方偏位
3) 身体前後軸周りの回転
(1) 左軸偏位
(2) 右軸偏位