Brugada症候群28タイトル

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Brugada症候群の予後評価に用いる諸指標の信頼性と治療指針(池田)

 杏林大学第二内科 池田隆徳は、2004年3月、東京国際フォーラムで開催された第68回日本循環器学会特別企画 「Meet the Expert」 の中の 「突然死を巡る最前線:リスク評価から治療まで」 においてBrugada症候群の予後評価について述べ、本症候群の心事故予測における諸種の臨床的諸指標の重要度を下記のように5段階に分けています。


   1) 予後評価の有用度が極めて高い:症候性。
   2) 予後評価の有用度が高い:若年性(<45歳)、男性、家族歴陽性, coved型ST上昇、迷走神経緊張亢進、高位胸部誘導でのST上昇、心室遅延電位の存在。
   3) 予後評価の有用度が低い:ST上昇レベル、QT分散。
   4) 予後評価上の有用性は疑わしい:ST上昇度の自然変動、遺伝子SCN5A変異、薬理学的負荷試験陽性。
   5) 予後評価上の有用性は未定:T波交互脈、心室刺激による悪性不整脈誘発性。

 池田は、諸種の臨床的諸指標の心事故予測におけるハザード比を下図の如く示しています。すなわち、年齢(20-50歳)、急死の家族歴、有症候性, coved型波形、自発変動、心室遅延電位およびT波交互脈の7項目のhazard比を検討し、統計的に有意であったのは、有症候性、自発変動、心室遅延電位の3項目であった述べています。
Brugada症候群における臨床的諸指標のハザード比
Brugada症候群における臨床的諸指標のハザード比
(池田隆徳:第68回日本循環器学会特別企画、Meet the Expert、2004)

 池田は、自験例および文献的考察を総合して、Brugada型心電図を示す例の予後評価ないし治療指針を下図の如くまとめています。この治療指針では、有症候性と心室遅延電位を重要視していますが、おおむね妥当な考えであると思います。

Brugada心電図例の指導・治療指針(池田)
Brugada型心電図を示す例の指導・治療指針
(池田隆徳:第68回日本循環器学会特別企画、Meet the Expert、2004)

 日本医大 新(あたらし)は、下図に示すような時間間隔を測定し(V1のS波の幅)、この指標が心事故予測に極めて有用であることを指摘しています。

Brugada型心電図におけるV1誘導のS波の幅の計測方法
Brugada型心電図におけるV1誘導のS波の幅の計測方法
(新博次:Heart View 7(8):931,2003)

 下図は、V1誘導のS波の幅の予後評価における有用性を示す図です。すなわち、V1のS波の幅が≦0.07秒の群では失神、心室細動などの心事故を起こした者は著しく少ないが、≧0.08秒の群では心室細動や失神発作などの心事故が極めて高率に認められています。

Brugada症候群の予後評価指標としてのV1のS波の幅の計測方法
Brugada症候群におけるV1誘導のS波の幅の予後的意義
(新博次:Heart View 7(8):931,2003)


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