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Brugada症候群の予後(Pryoriら,200例,2002年)
これまでに、Brugadaらの研究グループの3編の本症候群の予後評価に関する研究を紹介してきました。これらの論文は症例数も多く、統計的によく分析された良い論文であると思います。
しかしながら、Brugada症候群の予後評価ないしICD植え込み適応選定に際して、心臓電気生理検査による心室刺激による悪性不整脈(心室細動、多形性心室頻拍)誘発可能な例は予後不良であるとするBrugadaらの意見にはPryoriらは反対の意見を表明しています。
Prioriらの研究対象(Priori,S.,et al: Circulation 105:1342-1347,2002) |
Prioriは、2004年4月に東京で開催された循環器学会総会にゲスト講演者として来日されました。下図は講演中のDr.Sylvia Priori のスナップ写真です。Prioriらの論文内容を説明する前に、Prioriらの論文中に使用されている用語の解説をまず行いたいと思います。
Dr.Sylvia Prior i(分子心臓病研究室、Pavia大学、Italy) |
Prioriらの論文中の用語説明:
1. positive ECG: V1-3で≧2mmのST上昇を認める(右脚ブロックの合併の有無を問わない)。
2. spontaneous
pattern:基礎心電図が上記所見を示す。
3. mutation carrier:SCN5A mutation
を持つ例。
4. silent mutation
carrier:SCN5A mutationを持ち、基礎心電図も薬物負荷心電図も共に正常心電図所見を示す例。
5. cardiac
arrest:失神または突然死を起こし得る記録された心室細動。
6. sudden cardiac
death:症状出現後1時間以内の突然の予期しない死亡。
Pryoriらは、まず、Brugada型心電図を示す例の自然歴を調査し,下記のような結果を示しています。
1) 200例中22例(11%)が、生後から最終受診日までの間に心停止を起こし、内5例は心停止を複数回起こした。
2) 心事故の出現時期は33±13年(2カ月〜55歳)である。
3) 予測しない急死家族歴を130例中26例(20%)に認め、これら26家系中に32例の急死例を認めた。
4) 失神の病歴は200例中34例(17%)に認めた。内、8例が心停止を起こした(8/34例, 23.5%)。
5) プログラム心室刺激で86例中37例(66%)に心室細動または多形性心室頻拍を誘発できた。
6) 誘発不能例29例中においても4例(13.8%)で心停止を起こした。
Brugada症候群200例における累積 生存曲線(Ksplan-Myer curve) (Circulation 105:1342-1347,2002) |
また下図は、プログラム心室刺激により心室細動誘発可能群と誘発不能群における累積生存曲線を示します。この図がPrioriらの研究で重要な結果を示し、心臓電気生理検査により心室細動が誘発可能な群と誘発不能な群との生存曲線には差がないことを示しており、心室プログラム刺激がBrugada症候群の予後評価に有用でないとの結果を示しています。
プログラム心室刺激による心室細動誘発有無によるBrugada 症候群の累積生存曲線(Kaplan-Myer cruve) (Priori,S.et al: Circulation 105:1342-1347,2002) |